起業というものは、何か社会に対して大きな問いを立てたり、あっと驚くようなイノベーションを起こすことを想像しがちですが、一歩目はシンプルに「誰かの役に立つことをやる」ということだったりします。私の親しい友人に、バーベキューを仕事に国内外を渡り歩いている強者がいます。それ一本で生計を立てているということが驚きなんですが、これがシンガポールなどでは引っ張りだこのようで、このようなことを聞くと世の中いろんな仕事があるもんだなと驚きますよね。

最近思ったんですけど、学生の“将来なりたい職業ランキング!”のようなものをネットでちょこちょこ見かけますが、果たして将来なりたい職業を聞くというような質問はどれほど学生たちの役に立つのものでしょうか。テクノロジーの進化は目まぐるしく、一説では、今の中学生が大人になる頃には50%以上の仕事が今はない仕事に変わると言われています。大袈裟に聞こえますが、スマホが普及したのもまだ十数年前と考えるとおかしくはないかもしれません。また、就職のために一生懸命勉強していい大学に入らなくてはといったこれまでの常識がある一方で、Googleが採用基準に学歴を不問とするなど、企業が求めるものもどんどん変わっていっています。

私たちは「将来どうなりたいか」という問いに幼少期から何度か出会っていて、その度に悩んだり、ないと不安になったりしますが、このような変化の激しい時代の中で、“将来の職業”に子供たちが今の自分を当てはめることにはあまり意味がないような気がします。

本日は、子供の将来について私たち大人がサポートできることはなにか、ということについて書いてみます。

 

何になるかより、どう生きたいか

前述の通り、ネットで世界中と繋がり多様な価値観が認められる世の中で、子供の将来にとって本質的に役に立つことは、点数や順位を与え就職活動に備えるということだけではなさそうです。むしろ、枠に当てはめずに個性を伸ばすことや、いろんな知識や経験を得る機会を作ることが、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか。

弊社スタートアップポップコーンでは、”子供の生きる力を育む”ということをテーマにゲーム教材を開発して教育現場に提供しています。プログラムの1つとして「哲学の授業」というカードゲームがあり、生徒たちが自分自身が大切にしたい生き方(働き方)について、カードゲームで探究し、グループ内で共有、質問し合うことで熟成させています。

私自身多くの受講生の価値観に触れてきましたが、小学生であっても「これが正しい」というような社会常識を持っているもので、ある種のバイアスがかかっているような子も少なくないということは意外な発見でした。例えば、「お金」について価値観を引き出すカードがいくつかあるのですが、受講生の中には“お金持ちになる”ということについて後ろめたさを持っている子もいます。そのような時に、「じゃあ人の役にたって、たくさん感謝されながらお金持ちになったらどう?」「そのお金で次はどんな人の役に立ちたい?」などとあえて条件を取っ払うように問いかけてみると、自分が今興味のあることについて積極的に話始めるのです。(個人差はありますが)

このように相手(子供)の中にある何かしらの答えを、問いを繰り返しながら一緒に探求していくプロセスをコーチング的コミュニケーションといいます(詳しくはまた改めて書いてみます)。私たちは、正解のない世の中だからこそ、画一的な教育だけではなく、今まさにこのように子供たち一人一人が内に秘めた可能性や興味関心に目を向け、長所を伸ばしていくようなキャリアのサポートが大切であると確信しています。そのためにはまず私たち大人が、子供の心の声を聞く耳を持ち、個性を制限するようなブレーキを外してあげることが必要です。子供の想像力というのは凄まじいものがありますが、大人が理由もなく“大人が決めた枠”に収めようとしないように注意したいですね。

仮に誰かの役に立つことが仕事になり、人生の3分の1くらいは仕事に費やす時間と考えるなら、誰かの役に立つということは生き方であるとも言えます(個人的に?)。冒頭で少し紹介した友人も、さすがに幼い頃からバーベキューの焼き師になりたいと決めていたわけでないそうで、自分が好きなことに向き合いながら生きていたらたまたまそれが仕事になったと話していました。

子供たちが「どう生きたいか」について一緒に探求し、自分自身で発見できるような機会をたくさん作ってあげることは、子供の将来のために今大人ができることではないでしょうか。同様に自分自身についても常に向き合っていく課題なのかなとも思います。