前回の記事では、ダニング=クルーガー効果を例に、バカの山から絶望の谷に落ちていくことが習慣化することで「学習性無力感」になってしまい、結果として好奇心・興味・関心が失われていくというお話をしました。
今回は、それを防ぐにはつまり、好奇心・興味・関心を高める(維持)するにはどのようにすればいいのか、自分の考えを書いていきたいと思います。

改めて、ダニング=クルーガー効果を表す図を示したいと思います。

「バカの山」を超えて「絶望の谷」に陥ってしまっても、努力を続けることで「絶望の谷」を超え「啓蒙の坂」を上っていく。これが出来れば問題ないのですが、どうすればこの坂を上ることが出来るのでしょうか。

ここで、この「絶望の谷」に陥る根本的な問題は、“知らないことがたくさんある”ことです。
知らないことが増えたから、自信を失い、好奇心・興味・関心までも失われていく悪循環が起こっているわけです。

つまりこの問題を解決するには、“周囲の環境”を整える、協力してもらうことによって“知らないこと”を減らしていき“知っている”に変えていけば「絶望の谷」を超えることができると考えています。
何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれませんが、知らないことを知っているに変えていくには

①自分で調べて理解する
②周りに聞いて教えてもらって理解する

の2つしかないと思います。
①のように一人で出来るにこしたことはありませんが、初めの頃はそう簡単にできるものではありません。なので、ほとんどの場合周囲の大人や先生に教えてもらうことが多くなります。

 

この記事を読んでいる方の多くが、もしかしたら保護者や教師など教える側の人が多いかなと思います。
ですので、今回は「絶望の谷」に陥っている子どもや生徒から教えてほしいといわれた場合にどの程度教えてあげればいいのか、教える側の視線で説明をしたいと思います。

 

改めて、「絶望の谷」に陥って自信を失っている、好奇心・興味・関心が弱まっている子どもや生徒から、教えてほしいとお願いされた場合どうすればいいのでしょうか。
もちろん「知らないこと」を少しでも減らしていけるように、教えていけばいいわけですが
―わかっていない部分を1から10まで全部教えてあげるべき?
―少しだけヒントをあげて、残りは自分で考えてみるようにするべき?

ほとんどの方は、なんとなく後者の方が良いのでは?と思うはずです。
これは、1から10まで全部を教えてあげてしまうと自分で分かったことや理解できたなどの達成感がないため、逆にその子どもや生徒はその内容について興味を失うばかりか、勉強に対しての興味も失う可能性があるためです。
では、少しだけヒントをあげるといいましたが、どの程度のヒントを与えればいいのでしょうか。

 

この問題を解決するヒントを、次の表が教えてくれます。

上の表は、理解度-不安度-興味度の関係を表す表です。

この見方は、まったくわからない(理解度0%)ことであれば、不安度が最も高く(不安度100%)なり興味度も0%になってしまい、逆に完璧に知っている(理解度100%)ことは不安度は全く(不安度0%)なく興味度も60%になる事を表しています。

ここで、注目すべきことは興味度が最も高まるのは、理解度が60%の時であることです。
60%知っていて、知らないことが40%の時の割合のときが最も興味度が高まるのわけです。

つまり、この知っていることと知らないことの割合を分かっていれば、子どもや生徒が一番興味を持って自分から進んで学んでいくために、どの程度のヒントなどを与えればいいのかを想像できるようになれます。

全く分からない子がいた場合は、その子が分からないことに関してもっと前の内容で知っている部分を把握し、60%は知っている範囲まで落としてあげる。このような調整を求められるわけです。

この様な調整を当たり前のように行うことは非常に難しいとこですが、この調整を自分自身で行う、周囲の協力を得て行うなどをすることで、興味度が高い状況を維持できるため、「啓蒙の坂」を地道に楽しく登り続けることができるようになります。

さらに、この状態(啓蒙の坂を上り続けること)が当たり前になれば、知識や経験が増えていき、最終的に高い好奇心などを持ったまま専門性が身につけることができます。
結果、周りの事に対して興味を持ち、それに対する解決策なども身についているので、学ぶこと対して抵抗感がないため、多くの分野について専門的な知識をどんどん身に付けていけるような人材へとなれるのです。

長々と書いてきましたが、まとめると「絶望の谷」を抜けるには興味度を維持したまま「啓蒙の坂」を上り続ける必要があり、そのためには知っていることが60%知らないことが40%になる割合にしていかなければいけない。
ということです。

これを当たり前のようにできれば、自信や好奇心・興味・関心を失うことはなくなるのでは、と考えています。

次回はこの好奇心・興味・関心について、幼児期のころから注意していくべきことを簡単に触れてみようと思います。